kebloghome

アイランドピーク 登山ガイド・記録|アクセス・許可証・ガイド・装備・工程・高所順応

はじめに

この記事の目的と対象読者

2025年4月、アイランドピーク(Island Peak / Imja Tse) に登頂しました。

アイランドピークは、技術的な優しさ、アプローチが整備されたエベレスト街道といった理由から、初めて「ヒマラヤの山に登ってみたい」「6,000m級の山に登ってみたい」と思っている人に最適な山です。

ですが、実際に初めての海外登山として足を運んだ際には事前に把握できなかった情報があり、計画段階で悩むことがありました。

そのため、この記事では、これからアイランドピークをはじめ、トレッキングピークに分類されるロブチェピーク(Lobuche Peak 6,145m)やメラピーク(Mera Peak 6,476m)登山の検討〜計画が楽になるよう、概ね以下の構成で情報を整理しています。

私は概ね以下のスタイルを採用しました。

パッケージツアーに参加する形でも参考にしていただける内容になっているかと思いますが、以下のようなスタイルで登る方には特に参考になる内容です。

  • ノーマルルート
  • ガイドとはBC付近の村(Chukkung)で現地集合・現地解散
  • 必要な装備は全て持参
  • 時間よりも安さを優先

この記事でわかること

  • アイランドピーク登山の概要
  • 必要な許可証とガイド手配の方法
  • 装備とレンタル事情
  • スケジュール例と行動記録
  • 高所順応のポイント

簡単な自己紹介

26歳。高校時代に友人とテント泊で八ヶ岳を縦走したことをきっかけに、登山の面白さに目覚めました。

大学では、約一年と短いながら探検部に所属し、沢登りや冬季含む縦走・岩稜の登攀などを経験。

2025年、社会人生活に一度区切りをつけ、春のネパールのアイランドピーク(Island Peak)に登頂。続けて夏にはパミール高原に渡り、レーニン峰に挑戦しました。

現在はフリークライミングに魅了され、岩場での時間を楽しんでいます。

アイランドピークとは? | 山域概要

  • 名称:アイランドピーク(Island Peak)/現地名 Imja Tse(イムジャ・ツェ)
  • 標高:6,189m
  • 位置:ネパール東部・クンブ地方(エベレスト、ローツェなど)
  • 山域:サガルマータ国立公園内
  • ルート
    • ノーマルルートは南東尾根。
    • フィックスロープをつかい、45〜50度ほどの雪壁を登る。
  • 登山の特徴
    • 高度順応しやすい立地
    • ベースキャンプ(約5,100m)からワンデイでアタック可能
    • エベレスト街道のトレッキング・山小屋泊が可能
    • 高所順応として利用されることも多い
  • 難易度
    • 敗退要因は高所順応の失敗や天候。
    • 技術的には基本的なアイゼン歩行・フィックスロープ通過・クレバス通過技術が必要。
    • 体力があり天候や高所順応の条件さえ揃えば誰でも挑戦可能。
  • 登山シーズン:春(3〜5月)、秋(9〜11月)がベスト。
  • 所用期間:日本発着で約1か月(現地トレッキング・順応込み)
18-IslandPeak
アイランドピーク

許可証とガイド | 登るために最低限必要な行政系

ガイドの必要性について

現在、ネパールの8,000m峰といった高峰をはじめ、トレッキングピークであっても基本的に認可を受けたガイドの同行が義務付けられています。

また、登山許可証(Nepal Mountaineering Association Permit)を入手する際、認可を受けたガイドの同伴を証明する必要があります。

許可証 一覧・費用・入手方法

登山許可証(Nepal Mountaineering Association Permit)はエージェントやロッジを通して入手します。

その他のものは、トレッキング中の支払所で支払えば良いので、現金だけ準備すればOKです。

*タメルでも入手可能ですが決して安くなるわけではないようです。


アイランドピークを上るために必要な許可項目を以下にまとめました(値段は2025年春時点)。

なお、登山許可証(Nepal Mountaineering Association Permit)の料金は季節変動性で、値上がりの可能性もあります。料金は以下を参照ください:Nepal Mountaineering Association | Service Charges for Foreign Climber per person in US dollar

項目料金支払先
Nepal Mountaineering Association PermitUSD 250 (込パッケージ料金)代理店
Sagarmatha National Park Entry PermitNPR 3000NTB
Khumbu Pasang Lhamu Rural Municipality Entry PermitNPR 2000NTB
TIMSNPR 2000NTB
Gaurishankar Conservation AreaNPR 3000NTB

ガイドの手配方法・費用

ガイドの手配の全体像

現地での様子を観察する限り、ガイドの手配は以下のようなエコシステムで行われているようです。


各国の代理店 
    ↓
ネパールの代理店
    ↓
ガイドを直接取りまとめている and/or 拠点となるロッジやレストラン
    ↓
ガイド(個人)

各手配方法について・注意点

上流の方が安心感が高い分コストは高く、下流はその逆になる傾向です。

レイヤー依頼先特徴・メリット・デメリット
国際レイヤー各国の代理店- コミュニケーション、サポート、保証、有事の対応が充実
- 安心感がある
- コストは高め
- ガイドと現地集合・現地解散のミニマルパッケージは稀
国レイヤーネパールの代理店- 事前の情報収集が可能
- 有事の対応が可能
- 登山の日程調整やガイド手配が事前に可能
地域レイヤーロッジ・レストラン- 現地到着時にガイドを手配可能
- 混雑時はすぐにガイドが捕まらない可能性あり
- どのロッジで手配可能か現地で情報収集が必要
個人レイヤーガイド(直接)- 見つけるのが困難(コネクションや聞き周る必要あり)
- すっぽかしや諸問題の保証・サポートは期待できない
- 許可証は別途手配が必要
- 費用は安いがリスクも伴う

私は、知人の紹介で、ネパール・タメルの代理店に、ガイドと許可証の手配を依頼しました。

出発前に装備やスケジュールの相談、値段の交渉ができたので、現地についてから事がスムーズに進みました。

紹介してほしいという方がいれば、ご連絡いただけたらと思います。

ガイド費用

ガイドとの現地集合・現地解散のミニマルパッケージの場合、700〜850 USDが相場のようでした(2025年春、許可証料金も含まれる)。

基本的には以下のサービスが含まれます。必ず、料金に含まれるサービス内容を確認しましょう。

  • ガイド(ベースキャンプ最寄りの村である Chhukung での現地集合・現地解散)
  • ガイドの保険
  • 登山許可証(Nepal Mountaineering Association Permit)
  • ベースキャンプでの宿泊・食事(水・湯も含む)

追加オプション例:

  • ガイド(ルクラやトレッキング途中の村から同伴)
  • ポーター
  • コック
  • 装備のレンタル

エベレスト街道トレッキング | BCへのアプローチ

ルクラ・スルケからエベレスト街道を歩き、チュクンを経てベースキャンプへ(約7日間)。

トレッキング路は整備が進んでおり、村ではロッジで宿泊・食事可能です。

トレッキングの起点は移動手段によって異なります。

  • 飛行機:ルクラ(Lukla)
  • 車・ジープ:スルケ(Surke)
  • 徒歩(クラシックルート):ジリ(Jiri)

街道情報は多く出回っているため詳細は割愛し、特に参考になったサイトを紹介します: ARC | ネパール(アクセス方法、装備、費用などを網羅)

インフラ | 水・電気・インターネット

  • :ロッジで入手可能。浄水タブレットまたは浄水器推奨
  • 電気:ロッジ充電またはソーラーチャージャー。標高が上がると料金増
  • インターネット:ナムチェ以降は現地SIM不可。Wi-Fiはロッジで利用可能

テント泊について

コスト削減のために一度考えたが結局もっていかず。

街道沿いは村や観光地の雰囲気で、基本的にロッジ利用が一般的。テント泊を行う場合は住民への配慮が必要。

装備

日本の冬山装備との違い

ここでは、日本の厳冬期で使う装備をベースに、少し足し引きする形で考えます。

また、シーズン中の最低気温は約−20C˚のため、衣類の日本の厳冬期用のもので基本的にはOK。大まかには以下の通り。

  • 不要:幕営、自炊用のキャンプ道具一式(*寝袋は必要、マットは不要)
  • 追加:氷河・FIXロープ用に、ハーネス、アッセンダーなどの登攀道具

装備表

以下は、参考までに私が実際にもっていった装備のリストです。

必要なものは大体入っているはずですので、これをベースに、「レンタル(後述)するか持参するか」「追加で何を持っていくか」など、必要に応じてカスタマイズをしてください。

IslandPeak_equipment
装備表

装備選びで迷ったポイント

ウェア系

  • 登山靴:シングルブーツで十分(レンタルもシングル有)。ダブルを使っている人もいた。
  • ダウンジャケット:エクスペディション用は不要。日本の冬山用で十分。深夜発なので日射なしで5〜6時間歩く前提で選ぶ。
  • 手袋:ダウンと同じく、日本の冬山用で対応可。
  • サングラス:透過率10%以下を推奨。

ギア

  • アックス:ほとんどの登山者は未携帯。FIXロープ利用で不要。
  • 地図:カトマンズ・タメルで購入可能。日本ではNational Geographic Everest Base Campが入手可。便利なアプリは後述。

薬・健康管理

  • ダイアモックス:呼吸促進に有効だが副作用あり。
  • 葛根湯:高山病初期に「風邪のような症状」が出たとき有効だった。
  • ロキソニン:高山病や気圧変化による頭痛で眠れないときに役立つ。
  • ORS:高山病時の水分補給に必携。

快適装備

  • ドリンク類:ロッジでお湯を買えばコーヒーやお茶が楽しめる。
  • 金属製カップ:ロッジのストーブでお湯を作るのに便利(次回持参したい)。
  • ソーラーチャージャー:標高が上がるほどロッジ充電料金も高騰。
equipment
サミット日に使う装備の例
purchase-thamel
タメル(Thamel)で購入した行動食や薬類

現地調達・レンタルについて

現地調達

カトマンズ・タメルとトレイル途中にあるナムチェ(Namche)で大体の装備は調達可能。

  • カトマンズ(タメル地区):クランポン、ハーネスなど技術的装備を揃えるならここが安心。
  • ナムチェ(Namche):衣類やトレッキング装備は十分入手可能。

レンタル

  • アイランドピークの場合、ディンボチェ(Dingboche)やチュクン(Chhukung)でレンタル可能。
  • ツアーやエージェントを利用している場合は、指定の場所でレンタルするのが一般的。

レンタルできる主な装備:

  • 登山靴
  • アックス
  • アイゼン
  • ハーネス
  • ヘルメット
  • 登行器(アッセンダー)
  • 下降器(ディセンダー)
  • スリング

スケジュール

全体で 2〜3週間。余裕を見て 1か月あれば安心です。 流れは以下の4フェーズに分けられます。

  1. アプローチ
  2. 高所順応
  3. サミット
  4. リターントレック

各工程の概要

① アプローチ(BCまでの工程)

  • ルクラ(Lukla)やスルケ(Surke)へ飛行機・バスでアクセス。
  • そこから約7〜10日、エベレスト街道を歩き、チュクン(Chhukung)へ。
  • チュクンからさらに6時間ほどでベースキャンプ(BC)到着。
16-Dingboche-Lobche
エベレスト街道・ディンボチェ(Dingboche)からロブチェ(Lobche)へ向かう

② 高所順応

  • 標高を大きく上げた翌日などに「休養日」を入れるのが基本。
  • 一般的には:
    • ナムチェ(Namche)で休養数日
    • チュクンからチュクングリ(Chhukung Ri 5,550m)へ登って刺激 → 休養
    • その後BC入り

注意点(体験談) 私は一度、高所順応を怠り 6,000m で撤退しました。

  • 休養を取らず25kgを背負って蓄積された疲労をとらず強行→ 高山病発症
  • 教訓:「無理のないペース・休養最優先」が最重要!

(詳細は レーニン峰登頂記 にもまとめています)

4-Namche-chill
ナムチェ(Namche)で休息 | ヒマラヤのマンハッタン?!

③ サミット当日の流れ・ルート

  • 標高差:約1,000m(5,100m → 6,189m)
  • 所要時間:約12〜16時間(長時間行動)
  • 天候は午前10時以降に崩れやすいため、深夜0〜2時に出発し、8〜9時までに登頂を目指すのが一般的。
26-summit
アイランドピーク ピーク手前の雪壁

コースタイム目安

  • BC → クランポンポイント(約6,000m):3時間
  • クランポンポイント → 頂上:3時間

私のケース;

時間工程
00:15起床・装備準備・朝食
01:00出発
04:00クランポンポイント 約6,000m
07:30登頂
13:00ベースキャンプ到着
17:00チュクン到着
concept-map
アイランドピークの概念図 | 『The Trekking Peaks of Nepal』より

④ リターントレック(下山)

  • 急げば 3日でカトマンズ戻りも可能。
    • 例:1日でルクラまで → 翌日スルケでJEEP → 3日目にカトマンズ着。
  • 飛行機利用は天候リスクが大きいため、時間に余裕を持つのがおすすめ。

行動記録と旅の様子

行動記録

Day日付行動内容
13/21カトマンズ(Kathmandu)エージェント 支払・相談 / ジープの手配 / 両替 / 食料調達
23/22カトマンズ —(ジープ)→ サレリ(Salleri)
33/23サレリ(Salleri) —(ジープ)→ スルケ(Surke) → チェプルン(Cheplung)
43/24チェプルン(Cheplung) → ナムチェ(Namche)
53/25ナムチェ(Namche) → クムジュン(Khumjung)
63/26クムジュン(Khumjung) → パンボチェ(Pangboche)
73/27パンボチェ(Pangboche) → アマダブラムB.C.(Ama Dablam B.C.) → ディンボチェ(Dingboche)
83/28ディンボチェ(Dingboche) → チュクン(Chukkung)
93/29チュクン(Chukkung) → アイランドピークB.C.(Island Peak B.C.)
103/30アイランドピーク(Island Peak)アタック(6000m到達も撤退) → チュクン(Chukkung)
113/31チュクン(Chukkung)停滞(休養日)
124/1チュクン(Chukkung) → ディンボチェ(Dingboche)
134/2ディンボチェ(Dingboche) → ゴラクシェプ(Gorekshep)
144/3ゴラクシェプ(Gorekshep) → ロブチェ(Lobche)
154/4ロブチェ(Lobche)停滞(休養日)
164/5ロブチェ(Lobche) → ディンボチェ(Dingboche)
174/6ディンボチェ(Dingboche) → アイランドピークB.C.(Island Peak B.C.)
184/7アイランドピーク(Island Peak)登頂 → ディンボチェ(Dingboche)
194/8ディンボチェ(Dingboche) → モンジョ(Monjo)
204/9モンジョ(Monjo) → サレリ(Salleri) / スルケ(Surke)
214/10スルケ(Surke) → カトマンズ(Kathmandu)

旅の様子

アプローチ
1-view-from-cheplung
チュプルン(Cheplung)の朝・ハッと、ヒマラヤにいることを感じる
2-KusumuKangguru
クスムカンガル(KusumuKangguru)
6-Namch-Khumjung
ジープの旅からクムジュン(Khumjung) まで4日間の旅を共にした仲間
8-Khumjung
クムジュン(Khumjung)| 質素で心地の良い村
BC
12-BC
BC
13-BC-food
BCのダルバート
14-BC-night
BC・出発前夜
サミット
20-summit
夜明け
22-summit
歩いてきた氷河を振り返る
24-summit
夜明けの光が嬉しい
レターントレック(下山)
29-return-trek
サミット後ディンボチェ(Dingboche)まで下る

保険について

日本山岳協会山岳共済会の「海外山岳保険」に加入しました。

この保険には、以下の2種類があり、標高と期間によって価格が決まります。

  • 救援者費用のみカバーするプラン
  • 治療費と救援者費用の両方をカバーするプラン

保険選びの際、「海外登山」「高峰登山」もカバーしている山岳保険は多くないため、加入前にその点を必ず確認すること。

あると便利なアプリ・サービス

参考資料とリンク集

全体

許可系

ルート情報

  • 『The Trekking Peaks of Nepal』Bill O'Connor(Mountaineers Books):概念図を参照

装備関連

その他参考リンク