12本爪アイゼンの選び方|縦爪・横爪、モノ・デュアル、モジュール式の違い
記事の目的と背景
アイゼン(クランポン)選びで悩むポイントの一つが、爪の本数や前爪の選び方です。
この記事では、私がアイスクライミングを始めたときに迷った経験をもとに、12本爪アイゼン・フロントポイントの選び方の指針を整理しました。
日本語で調べると、情報があっても分散していた一方、英語の情報源にはわかりやすい解説や議論が豊富です。それを参考に、同じように迷う方のために整理しました。
フロントポイントの選択肢
- 形状:横爪(平爪) vs 縦爪
- 本数:モノポイント vs デュアルポイント()
- モジュラータイプかどうか
横爪(平爪) vs 縦爪
雪・氷面との接触面積がポイント。
接触面積が大きければ雪面で安定するが、氷面への刺さりが弱く、氷への衝撃も増すため氷をわりやすい。
特徴 | 主な用途 | |
---|---|---|
横爪 | 接面が大きい: ・雪・氷面での安定性が高い ・その分、氷面への刺さりは弱い(または氷を破りやすい) | 一般雪山登山(登攀要素少なめ) |
縦爪 | 接面が小さい: ・固い氷でも刺さりやすい ・その分、雪面での安定性は低い | アイス / ミックスクライミング |
モノポイント vs デュアルポイント
平爪はデュアルポイントが多いため、ここでは縦爪を前提に話を進めます。
なお、執筆時、BlackDiamondから『スナッグルトゥースプロ』という「平爪・モノポイント」アイゼンが出ていますが、ここでは割愛させていただきました。
特徴 | 主な用途 | |
---|---|---|
モノポイント | 固い氷でも刺さりやすい(その分雪面での安定性は低い) 小さなフットホールドも拾いやすい (キョンしやすい、もう1本の爪の干渉がない) | 冬期のアイスクライミング(固い氷) フットホールドに貧しいクライミング |
デュアルポイント | 氷への刺さりやすさと安定性(バランス)の両立 モノと比べると小さなフットホールドで動きにくい(キョンする際の爪の干渉) | 春のアイスクライミング(緩い氷) 長いマルチのアイス/ミックスクライミング |
モジュール式フロントポイント
モジュールタイプは、フロントポイント(前爪)を「モノポイント↔︎デュアルポイント」と付け替え可能。
また、爪の角度や長さが調整可能な製品もあります(以下、製品例)。
デメリットとしては、構造的に複雑になるため、強度低下や故障しやすいという傾向が考えられます。ただ、実用面でどれだけ使用感に違いや前述の点を感じるかは私には不明です。
また、爪の交換には一定の手間がかかるため、手間をかけたくない方はその点も考慮すると良いでしょう。
結論 | 用途別まとめ
上記の性質をまとめると、それぞれの組み合わせの主な用途は以下のようになります。
なお、モジュラータイプは趣味・好みの傾向が強いと判断し、ここでは割愛しました。
- デュアルポイント × 平爪: 一般的な雪山登山、登攀要素少なめ
- デュアルポイント × 縦爪: 長いマルチピッチや春の緩んだ氷でのアイス・ミックスクライミング
- モノポイント × 縦爪: 細かいフットホールドを使う・冬季の硬い氷でのアイス・ミックスクライミング
補足
ここまでに整理した用途は、あくまでも傾向に過ぎません。
例えば、縦爪の方が氷面に刺さりやすいことに変わりはありませんが、平爪でもアイスクライミングやドライツーリングは可能です。
シビアなアイス・ミックスクライミングをするクライマーの中にはデュアルポイントを好む人もいますし、昔は平爪しかありませんでした。
最終的には「趣味・好み」「一つのアイゼンをオールラウンダーとして使うか」など、ご自身のニーズと感覚に合わせて選ぶことになります。この記事は、基本的な考え方の傾向として、参考にしていただければ幸いです。
参考リンク
- REI | How to Choose Crampons:アイゼン選びの全体像・モノ vs デュアル
- Lost Arrow | クランポンの選び方とフィッティング:アイゼン選びの全体像
- Mountain Project | Mono Point or Dual Point Crampons:モノ vs デュアル
- Reddit | Dual or mono vertical front points for WI3-5?:モノ vs デュアル
- 山岳金物店 | サイボーグ プロ:縦爪 vs 横爪